2005.11.30 Wednesday
強迫性障害をのりこえて
外へ出ませんか―外出がおっくうな人のために
有園 正俊
毎日放送の「ちちんぷいぷい」で、この本(↑)が紹介されていた。
著者の有園氏は、強迫性障害が嵩じて家から外に出ることができなくなり、
いわゆる引きこもりの状態が、約1年間続いたという。
その後、勇気を出して少しずつ外出を試み、
そのときの記録を日記にしたため、ブログに綴った。
これを一冊の本にまとめたものが、
『外へ出ませんか―外出がおっくうな人のために―』(文芸社、2005年)
という著書である。
初めはドアのノブに触れ、ドアを開けることから始まり、
外に出て目にした光景の一つひとつに感じたことを、
写真とともにコメントしている。
読者も一緒に街を歩いているような気分になれる、「バーチャル散歩ガイド」である。
有園氏は当初、強迫性障害という病気の存在も、
また自分自身がそうであるということも、全く知らなかったという。
外出できないからお医者さんにかかることもできないし、
家の中でその種の情報に触れる機会もなかったとのことである。
かつてのsabiもそうであった。
この病気は他の精神疾患に比べてややマイナーなのか、
マスメディアなどで取り上げられているのをほとんど見たことがない。
だから、数年前に ある本 で強迫性障害というものを知ったとき、
目からウロコの落ちる思いがしたし、光が見えてきたような気がした。
それでさっそく、sabiはその本を頼りに、
はるばる東海地方のとあるメンタルクリニックまで出かけていったのである。
しかし、そのような情報の全くない暗闇の中にいながら、
手さぐりで自分の状況を克服していった有園氏。
その精神力は、本当にすごいと思う。
また、有園氏が自分の症状として話しておられた具体例が、
sabiの現在の症状とそっくりだったことにも、非常に親近感を抱いた。
◆外を歩いていると、落とし物をしたのではないかと気になる。
◆大事なものを捨ててしまうのが怖くて、ゴミが捨てられない。
こんな症状である。
強迫性障害の症状はきわめて多岐にわたっており、まさに人それぞれである。
上記のような例は、今まで本やネットで調べた限りでは見つからなかったので、
思わずテレビの前で、「わー、sabiと一緒だぁっ!!」と声をあげてしまった。
sabiの強迫の対象は、これまでにいろいろと移り変わってきた。
例えば、職場などへの提出書類に記入ミスがないかどうか気になって、
いつまでたっても書類が出せない、とか。
同じような理由で、手紙を書くときにも何度も何度も書き直したあげく、
結局出せなくなってしまう、とか。
(もちろん、1回見直した時点でミスがないことはわかっているのだが、
それでも気になってしまうというのが、この病気の特徴なのである。)
しかし総じてsabiの場合、「もの」へのこだわりが大きいような気がする。
自分の大切なものが汚れるのがイヤで、自分でもさわれない、とか。
落とし物と似たような例だが、郵便物をポストに投函したあと、
本当にポストの中に入ったのかどうか気になって立ち去れない、とか。
有園氏がインタビューの中で、
外に出て“自然”に触れることで症状が改善することもある、と言っておられたが、
それは非常によくわかる。
自然の中にいるときって、そういうこだわりの対象の何もかもが、
なんだかどうでもよくなってくる気がするから。
ああそうか、私ってこんな小さなことにこだわってたんだな、と思うから。
この本、ぜひ一度手に取って読んでみたい一冊である。