2007.02.28 Wednesday
大阪府立大院生の論文データ捏造事件
これはsabi的には、かなり不可解な事件であった。
27日、大阪府立大が発表したところによると、
大学院工学研究科の修士課程2年の院生が、
薄膜トランジスタに関する論文のデータを捏造していたとのこと。
この論文は2006年、応用物理学会の英文誌に掲載され、
また、前年9月に発表した前段となる論文は、同学会の奨励賞を受賞していた。
<参照>
大阪府立大院生が論文データを捏造 理想的な数値1千個 (asahi.com)
大学院生が論文データを捏造、大阪府立大が発表 (NIKKEI NET)
論文ねつ造 : 大阪府立大院生認める 想像で数値データ入力
(MSN毎日インタラクティブ)
などなど‥‥。
今月21日に、学内の修士論文発表会で院生が同じ内容の発表をした際に、
助手らがデータのとり方の不自然さに気づき、これを指摘。
院生のパソコンやノートなどを調べると、実験をした証拠がないことがわかった。
問いただしたところ、データの捏造を認めたという。
担当教授らの指導がなっていなかったとか、
研究科全体としての責任を問わねばならないとか、あれこれ言うことは簡単である。
だが、sabiの関心は、別のところにある。
院生は、理想的な特性を表す数値を約1000個捏造し、入力していたとのこと。
担当教授も、 「きれいなデータで全く疑わなかった」 と、語っているという。
そのような、あまりにもできすぎたデータを捏造し、
あろうことか、学会の奨励賞まで受賞してしまったその院生は、
いったいどんな思いで、これまで過ごしてきたのだろう。
親に手伝ってもらった学校の宿題が、
何かの賞に入選してしまったときの、小学生のような気持ちだったのだろうか。
これは子どもながらに、たいへん心を痛める出来事だったりするのだが‥‥。
たとえ、何らかの人格障害 (病的な虚言癖など) を持つ人であったとしても、
まるっきり罪悪感のかけらもないということは、まず考えられない。
だれにも打ち明けることができずに、ウソの上塗りを重ねてきたのだろうか。
担当教授は、時期的なものから推定して、
学会の奨励賞を意識しての捏造だったのではないかと、話しているとのこと。
このコメントの真偽そのものも不明であるが、もし仮にそうだとしたら、
それを過剰なまでに彼に意識させたものは、いったい何なのか?
ただひたすら、競争から落ちこぼれたくないという思いだったのか?
あるいは、一流企業に就職したいとか、
ドクターをとって名誉ある地位につきたいとか、そういう野望があったのか?
その院生の背景をまったく知らないので、
彼をそこまで駆り立てたものがなんなのか、sabiにはわからない。
彼が本当に、奨励賞をとりたかったのかどうかということも。
もしかしたら、単に、 “勉強” はよくできると評価されてきた人間が、
“研究” という創造的活動に初めて遭遇して、相次ぐ失敗やつまずきの中で、
どうとりくんでよいかわからなくなって、ついつい魔が差してしまったのか?
最近の学生・院生は、 “まっすぐ近道で進みたい” という傾向が強いように思う。
だから、ムダな留年はできないし、必要最小限の授業を効率よく受講し、
そして、絶対にその単位は落とせない。
「修論が書けませんでした」 なんて、もってのほか。
いったん思い込んでしまうと、彼らにとってはもう、その道しかないのである。
彼がそういうタイプの人間かどうかはわからない。
しかし、いずれにしろ、この期に及んで、
自分の人生を左右しかねないような崖っぷちに立たされてしまったその院生に、
まわりの人間は、どんなフォローをすべきなのか。
研究科としては、彼への処分や事後処理を考えることに追われてしまいがちだが、
なんとか彼と一緒に、これから生きていく道を模索していってほしいものである。
27日、大阪府立大が発表したところによると、
大学院工学研究科の修士課程2年の院生が、
薄膜トランジスタに関する論文のデータを捏造していたとのこと。
この論文は2006年、応用物理学会の英文誌に掲載され、
また、前年9月に発表した前段となる論文は、同学会の奨励賞を受賞していた。
<参照>
大阪府立大院生が論文データを捏造 理想的な数値1千個 (asahi.com)
大学院生が論文データを捏造、大阪府立大が発表 (NIKKEI NET)
論文ねつ造 : 大阪府立大院生認める 想像で数値データ入力
(MSN毎日インタラクティブ)
などなど‥‥。
今月21日に、学内の修士論文発表会で院生が同じ内容の発表をした際に、
助手らがデータのとり方の不自然さに気づき、これを指摘。
院生のパソコンやノートなどを調べると、実験をした証拠がないことがわかった。
問いただしたところ、データの捏造を認めたという。
担当教授らの指導がなっていなかったとか、
研究科全体としての責任を問わねばならないとか、あれこれ言うことは簡単である。
だが、sabiの関心は、別のところにある。
院生は、理想的な特性を表す数値を約1000個捏造し、入力していたとのこと。
担当教授も、 「きれいなデータで全く疑わなかった」 と、語っているという。
そのような、あまりにもできすぎたデータを捏造し、
あろうことか、学会の奨励賞まで受賞してしまったその院生は、
いったいどんな思いで、これまで過ごしてきたのだろう。
親に手伝ってもらった学校の宿題が、
何かの賞に入選してしまったときの、小学生のような気持ちだったのだろうか。
これは子どもながらに、たいへん心を痛める出来事だったりするのだが‥‥。
たとえ、何らかの人格障害 (病的な虚言癖など) を持つ人であったとしても、
まるっきり罪悪感のかけらもないということは、まず考えられない。
だれにも打ち明けることができずに、ウソの上塗りを重ねてきたのだろうか。
担当教授は、時期的なものから推定して、
学会の奨励賞を意識しての捏造だったのではないかと、話しているとのこと。
このコメントの真偽そのものも不明であるが、もし仮にそうだとしたら、
それを過剰なまでに彼に意識させたものは、いったい何なのか?
ただひたすら、競争から落ちこぼれたくないという思いだったのか?
あるいは、一流企業に就職したいとか、
ドクターをとって名誉ある地位につきたいとか、そういう野望があったのか?
その院生の背景をまったく知らないので、
彼をそこまで駆り立てたものがなんなのか、sabiにはわからない。
彼が本当に、奨励賞をとりたかったのかどうかということも。
もしかしたら、単に、 “勉強” はよくできると評価されてきた人間が、
“研究” という創造的活動に初めて遭遇して、相次ぐ失敗やつまずきの中で、
どうとりくんでよいかわからなくなって、ついつい魔が差してしまったのか?
最近の学生・院生は、 “まっすぐ近道で進みたい” という傾向が強いように思う。
だから、ムダな留年はできないし、必要最小限の授業を効率よく受講し、
そして、絶対にその単位は落とせない。
「修論が書けませんでした」 なんて、もってのほか。
いったん思い込んでしまうと、彼らにとってはもう、その道しかないのである。
彼がそういうタイプの人間かどうかはわからない。
しかし、いずれにしろ、この期に及んで、
自分の人生を左右しかねないような崖っぷちに立たされてしまったその院生に、
まわりの人間は、どんなフォローをすべきなのか。
研究科としては、彼への処分や事後処理を考えることに追われてしまいがちだが、
なんとか彼と一緒に、これから生きていく道を模索していってほしいものである。